Case2026.10.19

SNSアクティベーション事例 — オンライン発のブランドが、店を「確かめる場」にした3例

#イベント#業界動向

An English version of this article is not yet available. The original Japanese text is shown below. Read the original in Japanese

オンラインで売ってきたブランドが実店舗を出すとき、語られる店に共通しているのは、店を「在庫を並べて売る場」ではなく「確かめる場」として設計し、買うことはアプリや配送、街の回遊に任せている点です。2026年10月に開いたソウルと香港の3つの店は、いずれも試すことに場所の大半を割き、その後の購入を店の外へつないでいました。

国・地域業種何をしたかSNSで語られる材料になる仕掛け出典
韓国・ソウル(聖水)ファッションEC(ジグザグ)3日間のポップアップ。試着した服をQRコードからアプリで注文試着室での着こなし、受け取り方を選べる買い方ニュース記事
香港(尖沙咀)眼鏡型の端末(Rokid)店員のいない旗艦店。8つの区画で自分で試し、自動会計で購入自分のペースで試す体験そのものニュース記事
韓国・ソウル(漢南洞)ファッション・美容のEC(W Concept)創業以来初の単独旗艦店。周辺の18店と組んだ街歩きの企画地図を手に周辺の店を回る行程ニュース記事

ここで扱うSNSアクティベーションとは、体験がSNSで語られるところまでを含めて設計するアクティベーションのことです。考え方の全体はSNSアクティベーションとはで整理しています。

なぜオンラインのブランドが、試すための店をつくるのか?

オンラインで買い物をする人にとって、届くまで分からないのは、着たときの形、素材の手触り、使ったときの感覚です。今回の3つの店は、その「届くまで分からない部分」を店で先に確かめてもらうことに場所を使っていました。買う手続きは、ふだんから使っているアプリや配送に残しています。

店で確かめ、買うことは店の外に任せる
店で確かめ、買うことは店の外に任せる

店で確かめた体験は、その人が語れる中身になります。画面で見ていた商品を実際に手に取った感想は、購入の報告よりも具体的で、見た人にとっても参考になる言葉になりやすいと考えられます。

ソウル聖水のポップアップは、試着から購入までをどうつないだのか?

ファッションECのアプリ「ジグザグ」は、10月16日から18日まで、ソウル聖水の建物でポップアップを開きました。報道によれば、1階にはアプリに出店する39のショップの秋冬の商品を集め、試着室を6か所用意しています。気に入った商品はQRコードを読み取ってアプリで注文し、その場で持ち帰るか、翌日の配送を選べます。2階には、そのアプリだけに出店する11のショップを集め、素材やデザインを手で確かめてもらう場にしていました。

ここで体験の中心にあるのは試着室です。普段は画面でしか見ない服を着て、鏡の前で確かめる時間は、そのまま着こなしの投稿の材料になります。買い方を選べることも、荷物を持たずに会場を回れるという点で、体験の邪魔をしない設計だと読めます。

香港の旗艦店は、店員のいない店で何を体験させたのか?

眼鏡型の端末をつくるRokidは、香港・尖沙咀の商業施設に旗艦店を開きました。報道によれば、店員を置かないセルフサービス型の店で、来店者は8つの区画で端末を掛け、翻訳や道案内、撮影などの機能を自分で試せます。購入は自動会計で完結します。

眼鏡型の端末は、説明を聞くよりも、掛けてみたときの見え方で理解が進む商品です。店員がいないことで、来店者は気兼ねなく試す時間を取れます。試した感想を誰かに話したくなる体験を、店の形そのもので後押ししている例だと考えられます。

ソウル漢南洞の旗艦店は、店の外にどう体験を広げたのか?

ファッションと美容を扱うオンラインのセレクトショップW Conceptは、創業以来初めての単独の旗艦店をソウル漢南洞に開きました。報道によれば、地下1階から地上3階までの4フロアで、美容・香り、韓国のデザイナーのファッション、暮らしの道具を階ごとに見せています。月末までは周辺の18の店と組み、店で受け取った地図を手に近くの店を回って来店を確かめると、贈り物がもらえる企画も行いました。今後は店で配信の撮影も行うとしています。

この例では、オンラインで磨いてきた「選ぶ目」を店の構成で見せたうえで、体験を店の外の街歩きへ広げています。1つの店で完結させず、地域を回る行程にしたことで、来店者が語れる場面の数が増える設計になっています。

日本で応用するとき、何を決めればよいのか?

  1. 店で確かめてもらうことを1つに絞る(着たときの形、使ったときの感覚、選ぶ基準など)
  2. その確かめに場所と時間の大半を割き、売り場の面積はその後に決める
  3. 購入の手続きを店の外のどこへ任せるか(アプリ、配送、後日の来店)を決める
  4. 来店者が語れる場面を店の中と外にいくつ置くか決める(試着室、体験の区画、周辺の店)
  5. 招待する人に、何を確かめてほしいかを事前に伝えておく
3つの店が「確かめる場」に置いたもの
3つの店が「確かめる場」に置いたもの

ポップアップの会場の設計はポップアップをSNSで広げるには、会場のどこを設計すべきかでも扱っています。体験の設計から当日の運営までを相談する場合の窓口は、SNSアクティベーションのサービスページにまとめています。

この記事の範囲

この記事は、各出典の報道に書かれている内容だけをもとに、3つの店の設計を読み解いたものです。来店者数や売上、実際の投稿の数は報道で確認できないため扱っていません。各ブランドの施策の優劣を比べるものではありません。

おわりに

オンラインのブランドが店を出すとき、試すことに場所を割くか、売ることに割くかで、来店者が持ち帰る言葉は変わります。確かめる体験を店の真ん中に置くことが、その店を語られる場所にする出発点です。