Case2026.10.14

来場者自身の体験を作品にする施策の共通点は何か

#業界動向

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来場者自身の体験を作品にする施策に共通する型は、ブランド側が完成した表現を一方的に見せるのではなく、来場者の記憶や行動そのものを素材にして表現を完成させていることです。

国・地域業種何をしたかSNSで語られた仕掛け出典
日本書店丸善ジュンク堂書店が「つんどくず」のぬいぐるみを展開積読の罪悪感を肯定するキャラクター設定とファンとの共創AdverTimes
日本レジャー施設八景島シーパラダイスが来園者の「うろ覚えイラスト」で電車広告を展開記憶だけを頼りに描いた絵をそのまま広告に使う意外性AdverTimes

丸善ジュンク堂書店の「つんどくず」は何が語られたのか

丸善ジュンク堂書店は、積読(つんどく)への罪悪感を肯定的な物語に転換する「つんどくず」というオリジナルキャラクターを展開しました。「本を買って積読が増えるほど、つんどくずがすくすく育つ」という設定で、2026年8月29日から全国12店舗と公式ネットストアでぬいぐるみの販売を始めました。ネットストアの予約分は受付開始後すぐに完売し、10月18日からは店頭での再販も予定されています。購入者やファンは「つみぬし」と呼ばれ、プロジェクトの共創に巻き込まれる設計になっています。語られたのは、商品そのものの可愛さだけでなく、積読という誰もが抱える後ろめたさを「肯定していい」と転換した視点そのものでした。

八景島シーパラダイスの「うろ覚えイラスト」は何が語られたのか

横浜八景島シーパラダイスは、夏休みの来館者に実物を見ずに記憶だけを頼りに生きものを描いてもらい、その絵を京浜急行電鉄の車両広告に使う企画を実施しました。施設内に絵を描く場を設けたほか、SNSとウェブサイトでも募集し、約1カ月半で約6000点が集まり、うち106点を採用しています。描いた人の年齢は3歳から83歳までと幅広く、参加者の絵を並べて「もう一度来てください」というコピーを添えた表現が話題になりました。あえて実写を使わず、来園者自身の記憶の不確かさをそのままユーモアに変えた点が、広告としての新規性になっています。

2件に共通する設計の考え方は何か

2件とも、ブランド側が完成度の高い表現を用意して見せるのではなく、来場者自身の体験や記憶という不完全な素材をそのまま作品の核に据えています。丸善ジュンク堂書店の例では、積読という後ろめたい感情そのものを物語の起点にし、八景島シーパラダイスの例では、記憶の不確かさというネガティブに見える要素をユーモアに転換しています。どちらも、来場者や顧客を一方的な受け手として扱わず、彼らの体験そのものが表現の一部になるよう設計している点が共通しています。

なぜ「不完全さ」をそのまま使うことが効果を生むのか

通常、ブランドが発信する表現は、完成度や正確さを重視して作り込まれます。しかし2件の事例が示しているのは、来場者自身の体験や記憶という、完璧ではない素材をそのまま使うことで、作り込まれた表現にはない親近感が生まれるという点です。たとえば、イラストの巧拙を問わず106点を採用した八景島シーパラダイスの例では、絵の完成度よりも「記憶を頼りに描いた」という行為そのものが話題の核になっています。この発想は、プロが作った完璧な素材を用意できない場面でも応用できるという点で、予算や制作体制の規模にかかわらず参考にしやすい設計です。

一方で、不完全な素材をそのまま使うことにはリスクもあります。来場者の投稿や作品を扱う以上、不適切な内容が混ざらないよう一定の選別の基準を事前に決めておく必要があります。八景島シーパラダイスの例でも、約6000点から106点を採用するという選別の工程を経ており、集まったものをすべて無条件に使っているわけではありません。選別の基準を明確にしておくことが、素材の不完全さを活かす設計と、品質管理を両立させる土台になります。

日本で応用するときに決めること

  1. ブランド側の完成した表現ではなく、来場者自身の体験・記憶・行動を素材として組み込めないか検討する
  2. 素材の完成度を問わず、行為そのもの(描く・参加する)に価値を置く設計にする
  3. ネガティブに見える要素(罪悪感・記憶の不確かさなど)を、肯定やユーモアに転換できないか考える
  4. 来場者・顧客を共創の相手として位置づけ、継続的に関わってもらう仕組みを作る

こうした設計は、SNSアクティベーション(体験がSNSで語られるところまでを含めて設計するアクティベーション)の一つの形です。体験の設計から投稿につながる仕掛けづくりまでの相談は、サービスページ で受けています。

この記事の範囲

この記事では、2件の事例に共通する設計の型を扱っています。個別の販売数や広告効果の数値、取り上げたブランドの他施策との比較については、ここでは判断していません。

おわりに

来場者自身の体験を作品にする施策は、完成度の高い表現を一方的に見せるのではなく、来場者の記憶や行動という不完全な素材をそのまま核に据える設計だと考えています。ネガティブに見える要素を肯定やユーモアに転換する視点も、2件の事例から読み取れる共通点です。