Data2026.07.22

投稿義務のないギフティング、実際に何%が投稿されるのか

#ギフティング#投稿率#Instagram

結論から書きます。投稿義務のないギフティングでも、91%は投稿されます。私たちが直近4年間に手がけた44案件・342名分の実績記録を集計した数字です。有償投稿の93%との差は、わずか2ポイントでした。この記事では、その内訳と、平均を押し下げた「たった1件の事故案件」の構造までを公開します。

なぜこの数字を公開するのか

「投稿保証がないなら、有償投稿にすべきではないか」。ギフティングを提案に組み込むたび、この議論が現場で起きます。ところが、この問いに答えられる公開データはほとんど存在しません。判断材料がないまま、印象論で語られ続けてきたのがこのテーマです。

そこで私たちは、自社の実績記録を集計して公開することにしました。対象は直近4年・44案件・342名分の実績記録(自社調査)。投稿の有無が明確に記録されたレコードのみを集計対象としています。なお、イベント招致型の案件は座組が異なるため別集計とし、今回は除外しました。データには範囲の限界がありますが、その限界も含めてこの通り開示します。数字を手元に抱え込むより、市場の共通言語にした方が、ギフティングという手法そのものの信頼につながると考えたためです。

結果:91%は投稿される

グラフ1:ギフティング vs 有償投稿の投稿率
グラフ1:ギフティング vs 有償投稿の投稿率

集計の結果、投稿義務のないギフティングの投稿率は91%(n=342)でした。比較のため、同じ実績記録から有償投稿案件を集計すると93%(n=832)。その差は2ポイントです。342名のうち投稿に至らなかったのは32名。10人に届けて9人が、義務がなくても投稿してくれる計算になります。「義務がないと投稿されない」という通説は、少なくとも私たちの実績記録の上では成り立ちませんでした。

なぜ義務がなくても投稿されるのか。私たちの解釈はシンプルです。インフルエンサーにとって投稿は「課された義務」ではなく、「素材が良ければ載せたいもの」だからです。彼らは日々、自分のフィードに載せる価値のあるものを探しています。世界観に合うプロダクトが適切なかたちで届けば、それは義務ではなく素材になります。逆に言えば、ギフティングの成否は「投稿を約束させられるか」ではなく、「載せたいと思われる届け方ができるか」で決まる、ということです。

もちろん、投稿数・投稿日・訴求内容までコントロールする必要がある施策では、有償投稿が適していることに変わりはありません。ここでお伝えしたいのは両者の優劣ではなく、「投稿されないからギフティングは選べない」という前提が、データの上では事実と異なるという一点です。

フォロワー帯域で投稿率は変わるか

グラフ2:フォロワー帯域別のギフティング投稿率
グラフ2:フォロワー帯域別のギフティング投稿率

フォロワー数の帯域別に見ると、意外な形が現れました。1〜5万は89%(n=57)、5〜10万は84%(n=50)、10〜30万は85%(n=89)、30〜100万は94%(n=33)。最も投稿率が低いのは、中堅帯の5〜30万でした。

「フォロワーが多いほど投稿されにくいはず」という直感は、この記録では裏切られています。私たちの仮説はこうです。5〜30万の帯域は、PR案件の依頼が最も集中するゾーンです。日々多くの案件や商品が届くなかで、フィードに載せられる本数には物理的な限りがあり、ギフティングまで手が回らないことは自然に起こります。一方で30〜100万の帯域は、受け取るものそのものを厳選している方が多く、受け取ると決めたギフトには投稿で応える──というのが、キャスティング現場の感覚とも一致する説明です。

なお、100万以上の帯域はn=9とサンプルが少ないため、断定できません。あくまで参考値に留めますが、この帯域にギフティングのみで投稿を期待する設計は、現時点で私たちはおすすめしていません。実務への示唆をまとめるなら、中堅帯に依頼する場面ほど、後述する「座組の設計」が投稿率を左右する、ということです。

平均を3ポイント下げた、たった1つの案件

ここからが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。44案件の内訳を見ると、43案件の投稿率はほぼ90〜100%に収まっていました。ところが1案件だけ、投稿率33%(n=30)という数字があります。この1件が全体平均を約3ポイント押し下げました。この事故案件を除外すると、投稿率は96%(n=312)まで上がります。

つまり、「ギフティングは投稿されるか?」という問いの立て方が、そもそもずれているのです。ほとんどの案件は投稿されます。本当の論点は「投稿されない座組を踏まないか?」にあります。提案の場で問われるべきは投稿保証の有無ではなく、その企画が43案件の側に入る設計になっているかどうか、だと私たちは考えています。

その1件について、特定につながるため業界・ブランドの詳細は伏せます。私たちの振り返りでは、事故の構造は3つに一般化できます。第一に、ブランドとインフルエンサーのトーンの不一致。起用リストがブランドの世界観ではなく、フォロワー数を軸に組まれていました。第二に、ギフトと相手の期待値のミスマッチ。受け取った側が「自分のフィードに載せる素材」と感じられる水準に、ギフトの内容と見せ方が届いていませんでした。第三に、送付時期と投稿動機の設計不足。季節の文脈から外れたタイミングで届き、受け取った側に「今これを載せる理由」がなかった。

これらは定性的な振り返りであり、断定はできません。ただ、他の43案件が当たり前に越えていたハードルを、この1件だけがことごとく踏み外していたことは、記録からはっきり読み取れます。事故は確率で起きるのではなく、座組で起きる。それが私たちの結論です。

実務チェックリスト:投稿される座組の条件

では、投稿されない座組を踏まないために何を見ればよいのか。私たちがギフティング案件の設計時に確認している項目を、そのまま公開します。

  • ギフティングという形式との相性を確認する。 ギフトの紹介がその方の発信スタイルに自然に馴染むかを、過去の投稿から丁寧に見る
  • ブランドとインフルエンサーの世界観が一致しているか。 フォロワー数より先に、フィードのトーンを見る
  • 送付タイミングを投稿動機に合わせる。 季節・イベント・本人の発信文脈と重なる時期に届ける
  • 同梱物を設計する。 ブランドの文脈が伝わる手紙や説明の有無で、「素材」としての価値が変わる
  • 送付後のフォローアップを行う。 催促ではなく、投稿しやすくなる情報(タグ、ブランドの意図)を渡す

私たちは、こうした判断を「データで落とし、目利きで選ぶ」二段構えで行っています。数字で帯域と投稿履歴を絞り込み、最後はフィードを1つずつ見て世界観の一致を判断する。この後段の目利きこそが、33%の事故案件と96%の通常案件を分ける部分だと考えています。

おわりに

ギフティングは「投稿されるかわからない施策」ではなく、「座組を誤らなければ9割以上投稿される施策」でした。この数字が、提案の現場から印象論を終わらせる材料になれば幸いです。

次回は、イベント招致型案件の投稿率を公開する予定です。来場と投稿の関係は、ギフティングとはまた違う形をしています。

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出典: スタッツ株式会社調べ(2022-2026年、自社案件実績)。投稿有無が明確に記録されたレコードのみを集計。イベント招致型案件は別集計のため除外。