Insight2026.10.19

フリーランス新法は、インフルエンサーへの依頼にどう関係するか

#起用設計

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個人で活動するインフルエンサーに投稿や出演をお願いするとき、相手が従業員を使っていない個人(または一人社長の法人)であれば、フリーランス新法(正式名称は「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」、2024年11月1日施行)の対象になります。発注する側は、依頼したら直ちに取引条件を書面か電子メール・SNSのメッセージなどで明示し、従業員のいる会社であれば報酬の支払期日も守る必要があります。所属事務所を通した依頼は、事務所の体制によって扱いが変わります。

場合本法の対象か理由
従業員のいない個人のインフルエンサーに直接お願いする対象相手が「特定受託事業者」(個人で従業員を使用しない者)に当たる
代表者1人だけで従業員のいない法人に依頼する対象一の代表者以外に役員がなく、従業員を使用しない法人も含まれる
従業員のいる所属事務所と契約し、事務所から本人へ依頼が流れる事務所との取引は対象外になりやすい契約の相手方が特定受託事業者に当たらない
代理店がブランドから受けた仕事を、個人のインフルエンサーへ再委託する対象(代理店が発注事業者)再委託や実質的な委託をしている場合は、仲介にとどまらない
商品を販売するだけで、投稿や出演をお願いしない対象外業務の委託ではなく売買に当たる

フリーランス新法の対象になるのは、どんなインフルエンサーか?

対象になるのは、従業員を使用していない個人と、代表者1人だけで他の役員も従業員もいない法人です。ここでいう「従業員を使用」とは、週20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる人を雇っていることを指します。会社員が副業として受けている依頼も含まれます。

依頼の相手によって、フリーランス新法の扱いはどう変わるか
依頼の相手によって、フリーランス新法の扱いはどう変わるか

インフルエンサーは、個人で活動している人、一人で法人を作っている人、マネジメント会社に所属している人が混在しています。見た目のフォロワー規模や知名度では区分が分からないため、依頼の前に「契約の相手はどこか」「その相手に従業員はいるか」を確かめることが出発点になります。

たとえば、発売前の新商品について、個人で活動する10名に投稿をお願いする場合を考えます。うち数名がマネジメント会社に所属し、残りは個人で窓口を持っているなら、同じ施策の中に本法の対象になる取引とならない取引が混ざります。条件の示し方を一律にしておくと、取りこぼしが起きにくくなります。

依頼するとき、発注する側は何を守ればよいのか?

最初に守るべきは、取引条件の明示です。依頼に合意したら直ちに、発注者と受注者の名称、委託した日、お願いする業務の内容、納品や作業の期日と場所、報酬の額と支払期日などを示します。明示の方法は書面か、電子メール・SNSのメッセージ・チャットツールなどの電磁的方法から発注する側が選べます。SNSのメッセージで示す場合は、送り先を特定して送れる機能に限られます。

投稿をお願いする依頼では、「給付の内容」に投稿の本数、媒体、投稿の形式を書きます。投稿した写真や動画をブランド側で二次利用する場合は、使う範囲も明確に書く必要があります。二次利用の考え方はインフルエンサー契約書に最低限入れておくべき項目とは何かで整理しています。

従業員のいる会社が発注する場合、報酬の支払期日は、投稿などの給付を受け取った日から60日以内のできる限り短い期間で定めます。代理店がブランドから受けた仕事を再委託する場合は、再委託である旨などを明示すれば、元の発注者からの支払期日から30日以内で定める例外があります。

長期のアンバサダー契約では、何が加わるのか?

従業員のいる会社が1か月以上の期間で委託する場合は、受領拒否・報酬の減額・不当なやり直しの要求などの禁止行為が加わります。6か月以上の委託(更新で6か月以上続く場合も含む)では、途中で解除するときや契約を更新しないときに、30日前までに予告する義務と、求められたら理由を示す義務が加わります。育児や介護と業務の両立への配慮も求められます。

委託の期間によって、発注する側に加わること
委託の期間によって、発注する側に加わること

たとえば、年間のアンバサダー契約を結んでいたブランドが、方針の変更で次の更新をやめる場合、契約満了の30日前までに更新しない旨を伝える必要があります。半年ごとに更新してきた契約も、通算で6か月以上続いていれば同じ扱いです。不祥事など本人に重大な原因がある場合の扱いは厳格に判断されるため、起用中のインフルエンサーが不祥事を起こしたら契約はどうなるかで触れた契約上の取り決めと合わせて確認しておきます。

ブランド・代理店・インフルエンサーは、それぞれ何を確かめるのか?

ブランドが個人に直接依頼するなら、ブランド自身が発注事業者になります。代理店やキャスティング会社が間に入る場合、単に紹介するだけなら発注事業者には当たりませんが、再委託している場合や、相手の選定や報酬の決定に深く関わって実質的に委託している場合は、その会社が発注事業者になります。誰が明示と支払いの責任を負うのかを、座組を組む段階で決めておくことが、後の行き違いを防ぎます。

インフルエンサーの側は、示された条件の中に投稿の内容・期日・報酬・支払期日がそろっているかを確かめます。電磁的方法で受け取った後でも、書面での交付を求めることができます。

依頼の段階で、何を決めておけばよいのか?

  1. 契約の相手(本人か、事務所か)と、その相手が特定受託事業者に当たるかを確かめる
  2. 発注事業者になるのはブランドか代理店かを決め、明示と支払いの担当をはっきりさせる
  3. 投稿の本数・媒体・形式、納品日(投稿日)、二次利用の範囲を「給付の内容」として書く
  4. 報酬の額と、給付を受け取った日から60日以内の具体的な支払日を書く
  5. 期間が1か月以上・6か月以上になるかを確かめ、更新しない場合の予告の時期を予定に入れておく

よくある誤解は何か?

「DMで条件を話し合ったから明示は済んでいる」という誤解があります。やり取りの中に必要な事項が散らばっているだけでは足りず、明示すべき事項がそろって確認できる形で示す必要があります。また、「投稿がまだだから委託はしていない」というのも誤りで、依頼に合意した時点で明示の義務が生じます。PR表記のルールは本法とは別の法令で決まっているため、PR表記とステマ規制の基本もあわせて確認しておくと安心です。

この記事の範囲

この記事は、公正取引委員会のフリーランスの取引適正化に向けた取組のページと、厚生労働省などが作成したフリーランス・事業者間取引適正化等法のパンフレット(いずれも2026年10月確認)をもとに、インフルエンサーへの依頼に関わる部分を整理したものです。個別の契約や取引が本法に当たるかどうかの判断はしていません。迷う場合は、公正取引委員会・厚生労働省の窓口や専門家に確認してください。

おわりに

フリーランス新法は、発注する側に新しい手間を求める法律に見えますが、守るべきことの中心は「条件を先に、確認できる形で示す」ことです。依頼の最初に条件がそろっていれば、投稿の内容や支払いをめぐる行き違いそのものが減っていきます。