インフルエンサー 契約の 解除条項には、 何を 入れておくべきか
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インフルエンサー契約の解除条項には、①解除できる場合、②解除の前に是正を求める段階、③解除したときの報酬の精算、④公開済みの投稿と撮影済み素材の扱い、⑤予告の5つを入れておきます。6か月以上続く委託(更新で6か月以上になる場合を含む)では、フリーランス新法により、ブランド側から解除や不更新をするときに30日前までの予告が原則として必要です。条項は、どちらか一方を縛るためではなく、起きたときの進め方を先に決めておくためのものです。
| 場合 | 解除の扱い | 条項で決めておくこと |
|---|---|---|
| 信用を大きく損なう行為が起きた | 直ちに解除できる定め | 対象になる行為の範囲と、事実を確かめる手順 |
| 表記やガイドラインに沿わない投稿があった | まず是正を求め、是正されなければ解除 | 通知の方法と、是正を待つ期間 |
| 投稿日を大きく過ぎ、連絡も取れない | 催告したうえで解除 | 催告の方法と、待つ期間 |
| ブランドの方針変更で施策を中止する | ブランド側の都合による解除 | 作業済み分の報酬と、予告の時期 |
| 6か月以上続く委託を終える | 30日前までの予告が原則(例外あり) | 予告の時期・方法と、理由を求められたときの対応 |
解除できる 場合は、 どう 書けばよいのか?
解除できる場合は、「ブランドのイメージを損なったとき」のような広い言葉だけで書かず、対象になる行為を例として挙げます。法令違反、契約で禁止した競合ブランドの案件の受託、ブランドや第三者を傷つける発信などです。広い言葉だけだと、どの出来事が当たるのかを解除の場面で初めて議論することになり、ブランドとインフルエンサーの双方が不安定な立場に置かれます。
あわせて、事実を確かめる手順も書きます。報道やSNSの投稿だけで判断せず、本人や所属事務所に事実を確認してから解除を決める、という順番です。不祥事が起きたときの全体の流れは起用中のインフルエンサーが不祥事を起こしたら契約はどうなるかで整理しています。
解除の 前に、 是正の 段階を 置くのはなぜか?
PR表記の漏れやNG表現の混入のように、直せば契約を続けられる問題が多いからです。こうした問題でいきなり解除すると、施策そのものが止まり、ブランドにとっても損失になります。条項では、書面で通知し、一定の期間内に是正されなかった場合に解除できる、という段階を置きます。
たとえば、発売キャンペーンで5名に投稿をお願いし、そのうち1名の投稿にPR表記が無かった場合、まず本人に表記の追加をお願いし、直ったことを確かめれば施策は続けられます。表記漏れへの対応の手順はタイアップ投稿にPR表記がないまま公開されてしまったらどうするかにまとめています。表記や表現のずれは、依頼の段階での伝え方で減らせることが多く、起用前にNG商材・NG表現は、いつ・どう伝えておくべきかもあわせて確認しておくと安心です。
解除したとき、 報酬と 投稿はどう 扱うのか?
報酬は、解除の理由ごとに扱いを分けて書きます。ブランド側の都合で解除する場合は、撮影や下書きなど、すでに終わった作業の分をどう支払うかを決めておきます。本人の側の重大な違反による解除の場合の扱いも、別に書いておきます。理由を分けずに「解除したら報酬は支払わない」と一律に書くと、ブランド側の都合で止めたときにも作業が無報酬になり、合意として成り立ちにくくなります。
投稿と素材は、公開済みの投稿、撮影済みで未公開の素材、ブランド側での二次利用の3つに分けます。公開済みの投稿の削除をお願いするのか、そのまま残すのか、二次利用はいつ止めるのかを決めておきます。削除をお願いできる範囲の考え方はインフルエンサーの投稿を削除してほしいとき、ブランド側はどこまで求められるかで扱っています。
ブランド 側の 都合で 終えるとき、 何に 気をつけるのか?
長期のアンバサダー契約など、6か月以上続く委託をブランド側から途中で解除するとき、または更新しないときは、フリーランス新法により、解除日または契約満了日の30日前までに予告する必要があります。災害などのやむを得ない場合や、本人の責めに帰すべき事由がある場合などは例外です。予告の後、本人から解除の理由を求められたら、例外に当たる場合を除いて理由を示します。
注意したいのは、契約に「一定の場合は予告なく解除できる」と書いておいても、例外の事由に当たらない限り、予告が不要にはならない点です。たとえば、年間契約を半年ごとに更新してきたアンバサダーとの契約を、ブランドの方針変更で次の更新をやめる場合、契約満了の30日前までに伝える段取りを、予定に入れておきます。対象になる相手の見分け方はフリーランス新法は、インフルエンサーへの依頼にどう関係するかで整理しています。
依頼の 段階で 決めておくこと
- 直ちに解除できる場合と、是正を求める場合を分け、対象になる行為を例として書く
- 通知の方法(書面・メッセージ)と、是正を待つ期間を書く
- 解除の理由ごとに、作業済み分の報酬の扱いを書く
- 公開済みの投稿、撮影済みの素材、二次利用のそれぞれについて、解除後の扱いを書く
- 委託の期間が6か月以上になるかを確かめ、更新しない場合の予告の時期を予定に入れる
契約書の全体像はインフルエンサー契約書に最低限入れておくべき項目とは何かにまとめています。
よくある 誤解は 何か?
「解除はブランド側を守るための条項だ」という受け止めがありますが、条項が具体的であるほど、インフルエンサーの側も、何をすれば契約が続き、どんな場合に終わるのかを見通せます。また、「民法上いつでも解除できるのだから、条項は要らない」という考え方もありますが、民法でも、相手に不利な時期の解除や、仕事が完成する前の解除には、損害の賠償が問題になる定めがあります。契約の性質によって扱いが変わるため、条項で進め方を決めておくことに意味があります。
この 記事の 範囲
この記事は、厚生労働省などが作成したフリーランス・事業者間取引適正化等法のパンフレットと、e-Gov法令検索の民法(いずれも2026年10月確認)をもとに、解除条項で決めておく項目を整理したものです。条文の書き方、個別の契約や解除が法令に適合しているかの判断は扱っていません。実際の契約書は、専門家に確認してください。
おわりに
解除条項は、使わずに済むことが一番の条項です。それでも、起きたときの進め方が先に決まっていれば、ブランドもインフルエンサーも、感情ではなく手順で話を進められます。