インフルエンサー 契約の 秘密保持 (NDA)はなぜ 必要か
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未発表の新商品や発売時期をインフルエンサーに先に伝える案件では、起用契約に秘密保持条項を入れておく必要があります。法律上の営業秘密として守られるかどうかは「秘密として管理されていたか」で決まるため、伝える側が情報を秘密として扱っていると示す根拠が契約書になるからです。
| 場面 | 事前に共有する情報 | 秘密保持条項 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 新商品の先行体験 | 商品の中身・発売時期 | 必要 | 解禁日前に投稿や会話で外に出ると、取り戻せない |
| 発表会・イベントの招待 | 日時・会場・登壇内容 | 必要 | 解禁前の告知が広がると、演出や招待の設計が崩れる |
| 既存商品のギフティング | 商品名のみ(すでに公開済み) | 簡易でよい | 守る情報が少ないため、解禁日と共有範囲の確認が中心 |
| 撮影・制作の打ち合わせ | 企画の方向性・撮影素材 | 必要 | 企画段階の内容は、投稿前に出ると競合に先を越される |
秘密保持条項は、 なぜ 起用契約に 入れておくのか
秘密保持条項の役割は、「何を、いつまで、誰に対して話さない」と事前に合意しておくことです。口頭で「まだ内緒でお願いします」と伝えるだけでは、どの情報が秘密にあたるのか、解禁日がいつなのかが人によって違って受け取られます。
不正競争防止法では、営業秘密として保護されるために、情報が秘密として管理されていることが求められます。経済産業省は営業秘密や秘密情報の管理について指針・ハンドブックを公開しており、情報を受け取る人が秘密だと認識できる状態にしておくことの大切さが示されています(経済産業省の営業秘密・秘密情報の保護に関する資料、2026年11月確認)。契約書に「秘密情報の範囲」と「解禁日」を書いておくことは、この認識を揃えるための実務上の手段です。
何を 秘密情報として 書いておくのか
書く範囲は広すぎても狭すぎても使いづらくなります。起用の設計では、次の3つを分けて書いておくと運用しやすくなります。
- 解禁前に外へ出してはいけない情報(商品の中身、発売時期、イベントの詳細)
- 解禁後は公開してよい情報と、その解禁日時
- 契約の存在や条件そのものを外に出してよいか
たとえば、発売の1か月前に新作の試作品を20名のインフルエンサーへ先行で送る場合、1の対象は商品の中身と発売時期、2の解禁日は投稿を解禁する日の朝、というように分けておけば、受け取る側も何を守ればよいかが明確になります。
誰と 誰が、 何を 約束するのか
秘密保持は、ブランドと代理店、代理店とインフルエンサーの間で、それぞれ契約書に書きます。インフルエンサーに「守ってもらう」ためだけの条項ではなく、ブランドや代理店が「どの情報をどの範囲で共有したか」を整理するための条項でもあります。
| 立場 | 確認すること |
|---|---|
| ブランド担当者 | 解禁日と、共有してよい範囲を代理店と先にそろえる |
| 代理店 | 起用契約に秘密情報の範囲と解禁日を書き、共有する人数を絞る |
| インフルエンサー | 解禁日と、家族・友人・マネージャーなど誰に話してよいかを確認する |
たとえば、マネージャーや撮影スタッフが同席する場合は、その人たちにも守ってもらう範囲に含めるのかを契約の段階で決めておく必要があります。契約書に書かれていないと、受け取る側は判断のしようがありません。
漏れが 起きたとき、 何を 確認するのか
情報が解禁前に出てしまったとき、最初に確認することは「誰が悪いか」ではなく「どの情報が、どの経路で、どこまで広がったか」です。共有先を絞る、解禁日までの連絡を一本化する、共有する資料に「解禁前」と明記するといった設計が、漏れを減らします。起用の設計側で共有範囲を決めておくことが、結果として関係者全員を守ることにつながります。
秘密保持について、 よくある 誤解は 何か
秘密保持条項まわりでは、次の3つの誤解が実務で起こりやすくなります。
- 「商品名が出ているなら、秘密保持は要らない」:商品名が公開済みでも、発売日、同梱物、撮影の企画内容が未公開なら、守る情報は残っています。何が公開済みで何が未公開かを、案件ごとに切り分けて確認します。
- 「一度口頭で伝えれば、伝わっている」:受け取る側にとって、どこまでが解禁前の情報かは、書かれていなければ判断できません。投稿の準備を始める人ほど、迷う場面が増えます。
- 「秘密保持は、ブランドだけの都合」:解禁日が揃っていないと、先に投稿した人が不利になったり、後から知った人が慌てたりします。秘密保持の取り決めは、起用された人が安心して準備を進めるための土台にもなります。
たとえば、発表会の前日にインフルエンサーへ企画の資料を渡す場合、資料の冒頭に「解禁前」と書き、解禁日時を添えておくだけでも、受け取る側の迷いは大きく減ります。契約書の条項に加えて、資料の側にも同じ表示を入れておくと、実務でそのまま働きます。
契約書のほかに、 設計の 段階で 決めておくこと
秘密保持条項は契約書に書くだけでは十分に働きません。起用の設計の段階で、次の4点を決めておきます。
- 共有する人数と、共有する順番
- 解禁日と解禁時刻(時間帯まで)
- 解禁前に問い合わせが来たときの連絡窓口
- 解禁日が動いたときに、誰が誰へ連絡するか
契約書全体の項目は、インフルエンサー契約書に最低限入れておくべき項目とは何かで整理しています。解除条項との関係はインフルエンサー契約の解除条項には、何を入れておくべきかも参考になります。
この 記事の 範囲
この記事は、起用契約に秘密保持条項を入れる理由と、書き方の考え方を扱っています。個別の契約書の文言が法的に有効かどうかの判断や、違反が起きた場合の法的な対応は扱っていません。個別の案件については、法務の専門家にご確認ください。
おわりに
秘密保持条項は、情報を守る条項であると同時に、関係者が同じ解禁日を見て動くための取り決めでもあります。起用の設計の段階で、守る情報の範囲と解禁日を決めておくことを、おすすめします。