ステマ規制に違反するとどうなるのか — 措置命令までの流れとブランドへの影響
ステマ規制(景品表示法上の規制)に違反した場合、事業者はまず指導を受けるか、違反が認められれば措置命令を受け、場合によっては課徴金納付命令と内容の公表に至ります。規制の対象は商品・サービスを供給する事業者であり、依頼を受けたインフルエンサー本人は対象ではありません(消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法上の考え方」、2026年10月確認)。
| 段階 | 内容 | ブランドへの影響 |
|---|---|---|
| 端緒の把握・調査 | 外部からの情報をもとに、消費者庁・公正取引委員会の地方事務所が事実関係を確認する | この段階では公表されない。調査への対応が今後の進み方を左右する |
| 違反認定と弁明の機会 | 違反の事実が認められると、予定される措置命令の内容が事業者に通知され、弁明書・証拠書類を提出する機会が与えられる | 反論の機会はあるが、この通知を受けた時点で社内の体制を整える必要がある |
| 措置命令、または指導 | 措置命令に足りる事実があれば景品表示法第7条第1項に基づく命令、そうでなければ是正の指導 | 措置命令は再発防止策の実施などを求める内容を含む |
| 公表(措置命令の場合) | 命令の内容が消費者庁から報道発表され、命令書が公開される | 事業者名・違反内容が公になり、取引先・消費者からの見え方に影響する |
なぜ事業者だけが対象になるのか
ステマ規制は景品表示法に基づく規制であり、対象になるのは広告主である事業者です。依頼を受けて投稿したインフルエンサー本人は、規制の対象には含まれません。これは、表示内容の決定に関与しているのが事業者側だという整理によるものです。タイアップ投稿のPR表記とは?ステマ規制の基本と実務の型 で扱っている通り、PR表記が必要になるかどうかの判断も、事業者が表示内容の決定にどう関与しているかを基準にしています。そのため、ブランド・代理店の側が、投稿の依頼や確認の過程で表示のルールを守る責任を負うことになります。インフルエンサーに責任を転嫁する考え方は、規制の仕組みそのものと合っていません。「投稿者本人が気をつけていれば大丈夫」という理解のまま進めてしまうと、事業者側の確認体制が整わないまま依頼を重ねることになり、調査を受けた際に説明できる記録が残っていない、という事態につながりやすくなります。
措置命令までの流れで何が起きるか
調査の端緒は、外部からの情報提供であることが多く、消費者庁と公正取引委員会の地方事務所が事実確認を行います。違反の事実が認められると、消費者庁は措置命令の内容を事前に通知し、事業者には弁明書や証拠書類を提出する機会が与えられます。たとえば、投稿の依頼文に具体的な指示がなかったと主張したい場合、この弁明の機会にやり取りの記録を提出できるかどうかが、その後の判断に影響します。措置命令に至るだけの事実が認められない場合でも、違反のおそれがあれば指導という形で是正が求められます。措置命令が出されると、内容は消費者庁から報道発表され、命令書が公開されるため、事業者名と違反内容が公になります。
ブランドの担当者・代理店は何を確認しておくべきか
ブランドの担当者は、インフルエンサーへの依頼時のやり取りの記録を残し、表示内容の決定にどう関与したかを後から説明できる状態にしておく必要があります。代理店は、依頼文・確認のやり取りを保存し、表示の前提をインフルエンサーに明確に伝えた記録を残す役割を担います。これらの記録は、万が一調査を受けた際の弁明の材料にもなります。たとえば、継続的に取引のあるインフルエンサーへギフティングを行い投稿を依頼した場合、投稿が任意であったとしても、過去の取引関係や依頼時のやり取りの内容が総合的に考慮されるため、依頼のたびにPR表記の前提を明示し、その記録を残しておくことが実務上の備えになります。たとえば、複数のインフルエンサーへ同時に依頼する施策では、依頼文のひな形を統一し、個別のやり取りで表示の前提が抜け落ちないようにしておくことも有効です。
依頼の段階で決めておくことは何か
- 投稿内容の決定にブランド・代理店がどこまで関与しているかを、依頼時点で整理しておく
- 依頼時のやり取り(メール・メッセージ)を、投稿後も一定期間保存しておく
- PR表記を付ける前提を、依頼文の中であらかじめ明示しておく
- 継続的な取引関係がある相手には、特に表示の前提を明確に伝える
よくある誤解は何か
「指示をしていなければ問題にならない」と考えるのは誤解です。投稿任意のギフティングでも、PR表記は必要なのか で扱っている通り、やり取りの内容や取引関係などを総合的に考慮して、事業者の関与の有無が判断されます。また、「違反すればすぐに公表される」というのも誤解で、多くの場合はまず指導の段階があり、措置命令に至って初めて公表されます。
この記事の範囲
この記事では、ステマ規制に違反した場合の一般的な流れと、ブランド・代理店が依頼段階で確認しておくべきことを扱っています。個別の投稿や取引が規制の対象に当たるかどうかの最終判断、課徴金の算定方法については、ここでは判断していません。
おわりに
ステマ規制の対象は事業者であり、措置命令に至るまでには調査と弁明の機会という段階があります。依頼時のやり取りを記録として残しておくことが、万が一の際に自社の立場を説明する材料になると考えています。