SNSアクティベーション 事例 — 受け 手の 予想を 1点だけ 外した 3つの 施策は、 なぜ 語られたのか

3つの施策に共通するのは、「このブランドなら、こう出てくるはず」という受け手の予想を1点だけ外し、それ以外のブランドらしさは保ったことです。外した1点が「場所」「参加の条件」「語り口」のどれであっても、予想とのずれが投稿の本文に書く材料になります。SNSアクティベーションとは、体験がSNSで語られるところまでを含めて設計するアクティベーションのことで、この3例は「何をずらせば語られるか」を考える材料になります。
| 国・地域 | 業種 | 何をしたか | SNSで語られた仕掛け | 出典 |
|---|---|---|---|---|
| 日本(東京) | ビューティ(フレグランス) | 渋谷のカラオケ店を舞台に、香りを主役にした一夜限りのパーティー | 高級フレグランスとカラオケという場所の組み合わせ | FASHIONSNAP |
| オーストラリア | ウェルネス用品のEC | スマホの使用時間を減らした分だけ宿泊費が下がる、電波の無い小屋の宿泊企画 | 滞在前後の画面時間のスクリーンショットという参加の証拠 | Time Out |
| 日本 | コンビニ(食品) | 20周年の看板商品が、手紙の形でファンアートを募集 | 「ファンアートが2作品しか無かった」という告白とハッシュタグ | AdverTimes |
事例1: 高級 フレグランスが、 カラオケ 店を 選んだ
イヴ・サンローラン・ボーテは、ブランドのパーティーの東京版を、渋谷のカラオケ店で一夜限りで開きました。このシリーズは、これまでマドリード、ニューヨーク、ロンドンなどで開かれ、フランスではパン屋、ロンドンではレコード店が舞台になっています。各都市の日常のカルチャーの場を借りる、という型が先にあり、東京ではカラオケが選ばれました。会場には香水の香りが漂い、音楽とカルチャーとブランドの世界観を一つにまとめることが狙いとされています。
外した1点は「場所」です。高級フレグランスの発表の場として予想されるのは、ホテルやギャラリーです。カラオケ店という日常の場に置き換えたことで、来場者が投稿に書くのは香りの説明ではなく、「あのカラオケ店で」という体験の文脈になります。一方で、香り・ビジュアル・来場者の装いといったブランドらしさは保たれています。ずらしたのは場所だけで、残りは揃えるという配分が、違和感を話題に変えています。
事例2: スマホを 置くほど 安くなる、 電波の 無い 小屋
オーストラリアのウェルネス用品のECは、電波の無い小屋を運営する宿泊事業者と組み、カップル向けの宿泊企画を用意しました。到着時と退去前に、1日あたりの平均画面時間のスクリーンショットを提出し、減った割合に応じて宿泊費が下がります。記事によると、半分に減らすと1泊が無料になります。部屋には使い捨てカメラと日記帳の入ったキットが置かれ、Wi-Fiはありません。
外した1点は「参加の条件」です。ブランドが宿泊企画を出すこと自体は珍しくありませんが、「スマホを使わないほど得をする」という条件は、SNSで語られることを前提にした施策としては逆向きに見えます。ところが、画面時間のスクリーンショットという証拠が、滞在後に投稿する材料になります。使い捨てカメラの写真は現像してから投稿されるため、その場の投稿ではなく、後日の投稿を生む設計です。語られる時点を「滞在中」から「帰った後」にずらした例として読めます。
事例3: 商品が 手紙で、 ファンアートの 少なさを 告白した
コンビニエンスストアの看板商品は、発売20周年に合わせて、公式のXアカウントに、商品からファンに宛てた手書き風の手紙を投稿しました。記事によると、累計の販売数が大きな数字に達した一方で、SNSを調べるとファンアートは2作品しか見つからなかったことを明かし、ハッシュタグをつけてファンアートを募りました。商品そのものが語り手になる語り口が採られ、ファンの側からの返答や、実際に描かれたファンアートが集まったと伝えられています。
外した1点は「語り口」です。大手のブランドが20周年に出すものとして予想されるのは、感謝と実績の発表です。実績の大きさと、ファンアートの少なさを並べて、自分で告白する形にしたことで、受け手には返事をする理由が生まれます。募集の仕組みはハッシュタグと「すべて見る」という約束だけで、特典は前に出ていません。参加の動機を、商品の人格への返答に置いた設計です。
日本で 応用するときに 決めること
- ずらす1点を「場所」「参加の条件」「語り口」のどれにするか決め、残りはブランドらしさを揃える
- ずらした結果として来場者や参加者が投稿に書く一文を、企画の段階で想定しておく
- 語られる時点を「その場」にするか「後日」にするかを決め、証拠になるもの(写真・記録・返答)を用意する
- 違和感が不快に転ばないよう、ブランドの格や商品の安全に関わる要素は動かさない
- 参加の動機を特典に置かず、返答したくなる問いや役割に置く
この5点は、SNSアクティベーションとはで整理した「体験の設計」と「語られる設計」の両方にまたがります。設計の考え方はサービスページにまとめています。来場者の体験そのものを材料にした例は来場者自身の体験を作品にする施策の共通点は何かで扱っています。
この 記事の 範囲
この記事では、公開されている報道に書かれている事実をもとに、3つの施策の構造を読み解きました。各施策の成果の数字、費用、関係者の発言の詳細は扱っていません。施策の優劣を付ける意図はなく、「なぜ語られたか」の構造だけを整理しています。
おわりに
話題になる施策は、ブランドらしさを捨てたわけではありません。1点だけ予想を外し、残りを丁寧に揃えているから、ずれが違和感ではなく語る材料になります。何を外し、何を守るかを先に決めることが、設計の出発点です。