Case2026.10.15

発表会の事例 — 新作の特長を「説明」から「体感」に置き換えた3つの施策

#イベント#業界動向

新作の発表が語られる体験になっている施策に共通する型は、商品の特長を言葉で説明する代わりに、その特長を体で分かる空間に置き換えていることです。この記事では、発表の場を扱った3つの公開事例を、SNSアクティベーション(体験がSNSで語られるところまでを含めて設計するアクティベーション)の視点で読み解きます。

国・地域業種何をしたか語る材料になった仕掛け出典
日本機能性衣料ワークマンが新製品発表会のランウェイに極寒・雪・暖冬・大雨の4つの環境を再現観客席まで届く雨と風、冷凍庫の冷気という「見て分かる過酷さ」AdverTimes
日本ファッションメゾン マルジェラが秋冬コレクションの発売に合わせ、ショーの空気感を再現したポップアップを都内2か所で開催ショーの最後のルックを思わせる柄で統一した壁・床・家具FASHIONSNAP
北米(米国)高級家電LG Signatureが新キャンペーンの発表を、ニューヨークの美術館でのガラとして開催家電を「デザインの表現」として見せる、美術館という場の選び方Luxury Daily
商品の特長を、説明から体感へ置き換える3つの方法
商品の特長を、説明から体感へ置き換える3つの方法

ワークマンの発表会は、何が体験になっていたのか

ワークマンは2026年10月7日、東京・西新宿の屋内広場で秋冬の新製品発表会を開き、その中で「過酷ファッションショー」を行いました。ランウェイ上に、大型の冷凍庫を使った極寒、雪、暖冬、大雨の4つのエリアを設け、照明の色も変えながら、寒暖差や突然の豪雨を再現しています。大雨の場面では、観客席にも雨や風が届くほどの演出だったと報じられています。

ここで体験になっているのは、断熱や防水という性能そのものです。素材や数値の説明は聞いた人の記憶に残りにくい一方、目の前で雨に打たれても歩き続けるモデルの姿は、見た人が自分の言葉で語れます。同社は4月にも猛暑を想定したショーを行っており、季節ごとに「環境を再現する」という形を続けている点も、語られ方をそろえる設計として読めます。

出典: AdverTimes の記事

メゾン マルジェラのポップアップは、何を持ち帰れる場だったのか

メゾン マルジェラは、2026年秋冬コレクションの発売を記念して、銀座と六本木の2つのセレクトショップでポップアップを開いています。報道によると、どちらの会場も、ショーの最後に登場したルックを思わせるタペストリー柄の壁紙とカーペットで空間を統一し、同じ柄をパッチワークした家具を置いています。一方の会場には、その店だけの限定品も用意されました。

ショーは招かれた人しか見られませんが、この空間は店を訪れた人なら誰でも入れます。ショーの映像を流すのではなく、柄と質感で会場を包むことで、来た人は「ショーの中に立った」という体験を写真とともに持ち帰れます。発表の場に来られなかった人へ、発表の空気を届け直す設計です。

出典: FASHIONSNAP の記事

LG Signatureのガラは、場の選び方で何を伝えたのか

高級家電ブランドのLG Signatureは2026年10月8日、新しいキャンペーンの発表を、ニューヨークの美術館でのガラとして開きました。会場には著名人、インフルエンサー、メディア、同社の経営陣が集まり、3つのコレクションが紹介されたと報じられています。

家電は、機能を並べるほどほかの商品との違いが伝わりにくくなる商材です。このブランドは、機能を説明する代わりに、建築そのものが作品として知られる美術館を発表の場に選びました。来場者が会場で撮る写真には、商品と一緒に場の文脈が写ります。「この家電はデザインとして選ぶものだ」という主張を、言葉ではなく場所で伝えている例です。

出典: Luxury Daily の記事

3件に共通する設計の考え方は何か

共通しているのは、伝えたい特長を1つに絞り、それを空間に翻訳していることです。ワークマンは性能を気象に、メゾン マルジェラはコレクションの世界観を柄と質感に、LG Signatureはデザイン性を会場の格に置き換えました。来場者は説明を覚えて帰るのではなく、体験したことをそのまま語れます。

発表会を語られる場として組み立てる考え方は、新商品発表会をSNSアクティベーションとして設計すると、何が変わるのかで詳しく扱っています。言葉の定義はSNSアクティベーションとはにまとめています。

発表の場を体感の場にするときに決めること
発表の場を体感の場にするときに決めること

日本で応用するときに決めること

  1. 伝えたい特長を1つに絞る。複数の特長を同時に空間にすると、来場者が何を語ればよいか分からなくなります
  2. その特長を、見る・触れる・その場に立つのどれで分かるようにするかを決める
  3. 説明がなくても伝わるかを確かめる。登壇者の話を聞かなくても、会場に入った時点で特長が分かる状態を目指します
  4. 来場者が撮れる位置と時間を用意する。演出の最中に撮影できるのか、終わった後に撮る場を設けるのかを先に決めます
  5. 発表の場に来られない人へ届け直す場を考える。発表会の後に、同じ世界観の売場や展示を開く方法があります

たとえば、保湿力を特長にしたスキンケアの発表会であれば、成分の説明に時間を割くより、乾燥した部屋と潤った部屋を行き来して肌で違いを感じられる構成にすると、来場者は体験をそのまま言葉にできます。調理家電の発表であれば、仕様の一覧を配るより、焼き上がる音と香りが会場の入口まで届く配置にするほうが、語る材料が生まれます。

体験の設計からSNSでの広がりまでを一続きで考える進め方は、SNSアクティベーションのページで紹介しています。

この記事の範囲

この記事は、公開されている報道をもとに、発表の場の設計を読み解いたものです。各施策の成果や投稿の量は報道に記載がなく、確かめていません。LG Signatureの事例は、出典の記事のうち公開されている部分で確認できた内容だけを書いています。施策の優劣を比べるものではなく、制作の体制は扱っていません。

おわりに

3つの事例は、業種も規模も違いますが、説明を減らして体感を増やすという方向は同じでした。発表会の企画では、何を話すかより先に、会場に入った人が何を感じるかを決めると、語られる材料が残ります。