韓国と日本で、インフルエンサーへの依頼の進め方はどう違うか

韓国本社の進め方を日本にそのまま持ち込むと、つまずきやすいのは「誰に連絡するか」「いつ合意とみなすか」「表示を誰が確かめるか」の3点です。日本での依頼は、所属先を通した確認、条件を文書でそろえてからの合意、広告であることの表示を前提に組み立てます。本社の進め方が間違っているのではなく、前提が違うので、違いを先に本社と共有しておくことが日本側の担当者の最初の仕事になります。
| 場面 | 本社から求められやすいこと | 日本での進め方 | 本社へ先に伝えること |
|---|---|---|---|
| 最初の連絡 | 本人へ直接、すぐに連絡する | 所属先や窓口があるかを確かめ、ある場合はそこへ連絡する | 窓口を通すと返答までに日数がかかる |
| 合意 | 口頭や短いやり取りで進める | 投稿の内容・時期・表示・二次利用を文書でそろえてから合意とする | 条件がそろう前に商品を送っても、投稿は約束されない |
| 商品の提供 | 多くの人に一度に送る | 送る前に受け取りの意思を確かめ、投稿は任意か必須かを分ける | 任意の提供と、依頼としての投稿は別の施策になる |
| 投稿の確認 | 本社の表現をそのまま載せてもらう | 日本の表示と表現のルールに合わせて、日本側で確かめる | 本国で使える表現が日本では使えないことがある |
| 投稿後 | 素材を広告や販売ページで使う | 二次利用は範囲と期間を決めて、事前に許諾を得る | 後からの追加は、あらためてお願いが必要になる |
連絡の入口は、なぜ日本側で確かめる必要があるのか
日本では、事務所に所属している人や、仕事の窓口を別に設けている人が少なくないからです。本人のアカウントへ直接依頼を送っても、窓口が別にあれば、そこへ連絡し直すことになります。入口を間違えると、返答が遅れるだけでなく、相手に余計な手間をかけてしまいます。
たとえば、発売の3週間前に本社から「この20名に今週中に連絡してほしい」とリストが届いた場合を考えます。日本側の最初の作業は、連絡文を送ることではなく、20名それぞれの窓口を確かめることです。プロフィールに仕事の連絡先が書かれているか、所属先があるかを見て、連絡先を振り分けます。この工程を本社のスケジュールに入れてもらうだけで、その後の遅れの多くは防げます。依頼から合意までにかかる時間の考え方は、起用の依頼から本人の合意まで、リードタイムはどれくらい見ておくべきかで扱っています。
合意は、どの時点で成立したと考えるのか
日本では、投稿の内容、投稿する時期、広告であることの表示、素材の二次利用の4点が文書でそろった時点を合意と考えます。「興味があります」という返事は、合意ではなく検討の始まりです。
本社への報告で食い違いが起きやすいのはここです。本社が「返事が来た=決まった」と受け取ると、投稿日の約束や素材の利用を前提にした計画が先に進んでしまいます。日本側の担当者は、報告の言葉を「打診中」「条件を確認中」「合意済み」の3段階に分けて伝えると、本社との認識がそろいます。条件が固まる前に計画を進めた結果うまくいかなかった場合、原因は相手の側ではなく、合意の定義をそろえなかった進め方の側にあります。
商品の提供は、依頼とどう分けるのか
投稿を約束しない提供と、投稿をお願いする依頼は、別の施策として設計します。投稿を約束しない提供は、受け取った人が気に入れば自分の判断で紹介するもので、投稿されないこともあります。投稿を前提にするのであれば、最初から依頼として条件を伝えます。
たとえば、新しいクッションファンデーションを多くの人に送り、投稿数を本社へ報告することになっている場合、「送った数」と「投稿された数」に差が出るのは自然なことです。本社にはあらかじめ、提供は関係づくりの入口であり、投稿の数を約束するものではないと伝えておきます。提供の基本は、ギフティングとは?タイアップとの違いと向き不向きにまとめています。
表示と表現は、誰がどこまで確かめるのか
確かめる責任は、ブランドの側にあります。日本では2023年10月から、広告であるのに広告であることを隠す表示が景品表示法で規制されており、規制の対象は商品やサービスを提供する事業者です(消費者庁の案内、2026年10月確認)。依頼や商品の提供があった投稿には、広告であることが分かる表示をお願いし、日本側で公開前に確かめます。
化粧品の場合は、効能の言い回しにも注意が要ります。本国の販売ページで使っている表現が、日本ではそのまま使えないことがあります。本社から届いた訴求文をそのままお願いするのではなく、日本で使える言い回しに直してから共有します。美容領域の表現の考え方はコスメ・美容業界のインフルエンサーマーケティングで、韓国コスメの起用の考え方はこちらのページで紹介しています。
発売に合わせるなら、いつから動き始めるのか
本社の発売日が決まった時点で、逆算を始めます。日本側で先に時間がかかるのは、窓口の確認、条件の文書化、表現の直しの3つです。どれも発売日が近づいてからでは短縮しにくい工程です。
- 候補が決まったら、連絡の入口を確かめる
- 日本向けの条件書と、日本で使える表現の一覧を用意する
- 打診し、条件を確認しながら合意を進める
- 合意した人へ商品と資料を届ける
- 公開前に表示と表現を確かめ、投稿後に結果をまとめる
本社のスケジュールが日本の工程より短い場合は、人数を絞るか、投稿を約束しない提供から始めるかを本社と相談します。無理に間に合わせようとして確認の工程を省くと、公開後の修正や取り下げにつながり、かえって時間を失います。
この記事の範囲
この記事は、日本での依頼の進め方を、韓国ブランドの日本担当者に向けて整理したものです。韓国での慣行や法令そのものについては、確かな根拠をもって比較できる範囲を超えるため、扱っていません。個別の投稿が日本の法令に合っているかどうかの判断も扱っていません。
おわりに
日本での進め方は、遅いのではなく、確認の順番が決まっています。入口・合意・表示の3点を本社と先に共有しておくと、発売に向けた計画が現実に合ったものになります。