肖像権とは何か、インフルエンサー起用でなぜ重要なのか
肖像権とは、本人の容姿をみだりに撮影・公表・利用されないための権利です。インフルエンサー起用では、投稿として公開する範囲への合意と、素材を広告などに転用する二次利用の許諾は別物であり、どちらも肖像権への配慮を欠かずに個別に取る必要があります。
| 項目 | 何を取り決めるか | 注意点 |
|---|---|---|
| 投稿への合意 | 投稿として公開する内容・期間・媒体 | 合意の範囲外の用途には及ばない |
| 二次利用の許諾 | 広告・別キャンペーンなど投稿以外への転用 | 投稿時点の合意とは別に取り直す必要がある |
| 肖像権への配慮 | 容姿をみだりに利用されない本人の権利そのもの | 公の場で活動していることは配慮を不要にする理由にならない |
肖像権とはどのような権利なのか
肖像権は、本人の容姿という人格的利益そのものに由来する権利です。最高裁判所大法廷は、人は自己の容ぼう等をみだりに撮影されないことについて法律上保護されるべき人格的利益を有すると判示しており(最高裁判所大法廷判決・昭和44年12月24日、裁判所の判例検索システムで2026年10月確認)、氏名や肖像をみだりに利用されない権利は人格権に由来するものとされています。この人格的利益は、本人が有名であることや、日頃から公の場で発信する活動をしていることによって失われるものではありません。インフルエンサーだからこの権利への配慮が薄くなる、ということにはならないという前提を関係者全員が共有しておく必要があります。
肖像権と二次利用の許諾はどう違うのか
肖像権そのものは本人に帰属する権利ですが、二次利用の許諾は、その権利を踏まえたうえで「どの範囲まで使ってよいか」をブランド・代理店・インフルエンサーの間で個別に取り決める手続きです。両者は別のものですが、現場では一体として扱われがちで、投稿への合意さえあれば肖像権への配慮も済んだと誤解されやすい点に注意が必要です。投稿として公開する内容について合意したことと、その素材を別の用途に使ってよいと合意したことは、法的にも実務的にも別の合意だと捉えておくべきです。
投稿への合意だけでは進められない場面はどこか
たとえば、タイアップ投稿のために撮影した写真を、後日ウェブ広告のクリエイティブに転用したい場面では、投稿時点の合意だけでは足りません。投稿素材の二次利用とは?広告転用の基本と注意点 で扱った通り、広告への転用は投稿とは異なる利用範囲として、別途許諾を取る必要があります。また、契約が終了したあとに、過去の投稿写真をブランドの別キャンペーンのSNS広告に使いたい場面も同様です。契約終了によって投稿時点の合意の効力も切れているため、二次利用の許諾を後から追加でお願いしてもよいか で扱った考え方に沿って、改めて許諾を取り直す手順が必要になります。いずれの場面も、担当者が「前に合意をもらっているから大丈夫」と思い込みやすい点が共通しています。
配慮を怠らずに進めるには何をすればよいか
肖像権への配慮を欠かさずに進めるには、次の順序で確認します。
- 投稿として公開する範囲(内容・期間・媒体)を、ブランド担当者が契約時点で明確にする
- 投稿以外の用途(広告転用、別キャンペーンでの利用など)が想定されるかを、代理店を含めて早い段階で洗い出す
- 想定される用途ごとに、投稿への合意とは別の許諾をインフルエンサー本人から個別に取る
- 契約時点で想定していなかった用途が後から生じた場合は、その都度許諾を取り直す
この順序を守ることで、後から「どこまで合意していたか」が曖昧になる事態を避けられます。
インフルエンサー契約書に最低限入れておくべき項目とは何か では、こうした利用範囲の取り決めを契約書にどう反映するかを扱っています。
この記事の範囲
この記事では、肖像権という権利の基本的な位置づけと、投稿への合意・二次利用の許諾との関係を扱っています。個別の投稿や利用が肖像権侵害に当たるかどうかの判断は行っていません。具体的な許諾書の文面や、利用範囲ごとの対価の設定についても扱っていません。
おわりに
肖像権は、本人の人格的利益に由来する権利であり、インフルエンサーが公の場で活動していることによって失われるものではありません。投稿への合意と二次利用の許諾を別のものとして扱い、それぞれを個別に取り決めることが、この権利への配慮の出発点になると考えています。