Case2026.10.16

SNSアクティベーション事例 — 自社の店ではなく「相手の場」に出た3つの出店

#イベント#業界動向

自社の店を構えるのではなく、玩具店・百貨店・予約サイトといった「相手の場」の中に出る施策は、相手がすでに持っている人の流れと信頼を借りながら、その中に自社の世界観への入口を置くことで語られる材料になります。2026年に海外で行われた3つの出店を見ると、共通するのは、場を貸す側の強みを消さずに、自社にしかない体験を一点に絞って持ち込んでいることでした。

国・地域業種何をしたか語る材料になる仕掛け出典
フランス・パリ映画・玩具映画の配給元と国内の玩具チェーンが組み、作品の世界観の期間限定店を開いた等身大のキャラクターと撮影場所、来店者が一緒につくる大きなブロックの壁画presseagence
フランス・パリ百貨店・ファッション韓国の百貨店が、パリの老舗百貨店の売場に自国のデザイナーズブランド5つを集めた売場への出店と同時に、建物の外壁に大型の広告を掲げたPolinews
シンガポールホテル・旅行統合型リゾートが、旅行予約サイトの中に施設専用の「旗艦店」を開いた写真と映像を中心に、客室と館内の体験をまとめて見せるYahoo Finance
3例に共通する「相手の場」の借り方
3例に共通する「相手の場」の借り方

私たちは、体験がSNSで語られるところまでを含めて設計するアクティベーションを、SNSアクティベーションと呼んでいます(考え方の全体はSNSアクティベーションとは)。以下では、3例のどこが「体験」で、どこが「投稿のきっかけ」になり得たかを、報道に書かれている事実から読み解きます。投稿数などの成果は報道に書かれていないため、ここでは扱いません。

パリの期間限定店は、玩具チェーンと組んで何を足したのか?

Disneyとフランスの玩具チェーンKing Jouetは、2026年4月30日、パリ中心部のレ・アル地区に、スター・ウォーズの世界観をテーマにした約300平方メートルの期間限定店を開きました。報道によると、フランスでは初めての試みです。

1階は公開を控えた映画の世界観でまとめられ、等身大のキャラクターと複数の撮影場所が置かれました。2階は宇宙船を思わせる金属調の空間で、オリジナルのライトセーバーをつくるコーナーや、来店者が一緒に制作する大きなブロックのモザイク壁画があります。作品にちなんだメニューのカフェもあり、先着の来店者が先行上映会に参加できる機会も設けられました。

読みどころは、玩具チェーンが持つ「品ぞろえと売場の運営」に、映画の側が「その作品でしか撮れない場面」と「自分の手で関わる体験」を足している点です。自分が参加した壁画が少しずつ完成していく形は、来店者にとって語る理由になり、再訪のきっかけにもなります。

出典: presseagence の記事

百貨店の売場の中で、どうやって存在を外に示したのか?

韓国の現代百貨店は、自社の海外向け事業として、パリのギャラリー・ラファイエットの本店3階に約79平方メートルのポップアップを開きました。報道によると、欧州への出店は初めてで、韓国のデザイナーズブランド5つの商品をまとめて紹介し、会期は10月27日までです。

売場の内側の演出について、報道は詳しく書いていません。代わりに目を引くのは、出店にあわせて百貨店の建物の外壁に大型の広告を掲げたことです。記事は、韓国企業がこの外壁に広告を出すのは初めてだと説明しています。

ここでの読み解きは、売場が小さいほど「そこにいること」を外から見える形にする工夫が要る、ということです。観光客も多く訪れる建物の外壁は、それ自体が撮影される場所でもあります。売場の中の体験と、外から見える目印を組み合わせることで、店に入る前から語られる余地をつくっています。

出典: Polinews の記事(2026年10月12日)

予約サイトの中に「旗艦店」を開くと、何が変わるのか?

シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズは、旅行予約サイトAgodaの中に、施設専用の「旗艦店」を開きました。2026年10月8日の発表によると、客室とスイート、一部の館内体験を1か所で見て予約できるようにしたもので、単一の施設のためにつくられた最初の専用ページとされています。

紹介は写真と映像が中心で、宿泊と飲食、エンターテインメント、文化体験の組み合わせを編集した読み物として見せています。日本語と韓国語を含む複数の言語に対応し、予約サイトの側はトップページでの露出や検索枠からの導線を用意しました。予約サイトは、旅行者がSNSで見た料理やショーから旅行を計画し始めることが多いと説明しています。

この例は物理的な店ではありませんが、考え方は同じです。旅行を探す人がすでに集まっている場所の中に、施設の世界観をまとめて見せる入口を置いています。SNSで何かを見て興味を持った人が、次に向かう場所で同じ体験に出会える状態をつくっている点が、語られた後の受け皿として機能します。

出典: Yahoo Finance の記事(2026年10月8日)

日本で応用するときに決める順番
日本で応用するときに決める順番

日本で応用するとき、何を決めておくべきか?

3例から、相手の場に出るときに先に決めておきたいことは次の通りです。

  1. 相手の場が持っている強み(人の流れ、品ぞろえ、信頼)のうち、何を借りるのかを言葉にする
  2. 自社にしかない体験を、一点に絞って持ち込む
  3. 場の外から見える目印(外壁、入口、検索の入口)をどこに置くかを決める
  4. 来場者が自分の手で関わる要素を1つ入れ、再訪や投稿の理由にする
  5. SNSで見た人が次に向かう場所に、同じ体験への入口を用意しておく

たとえば、百貨店の催事場に期間限定で出る場合、売場の中の演出だけでなく、館の入口や案内に「ここでしか見られないもの」を1つ示しておくと、通りがかった人の写真にも残りやすくなります。また、雑貨店や書店の一角を借りて出る場合は、店の常連客の動きを妨げない置き方を、相手の担当者と最初に確かめておくことが欠かせません。私たちが手がけるSNSアクティベーションの進め方は、こちらのページにまとめています。会場のどこを設計するかはポップアップをSNSで広げるには、会場のどこを設計すべきかでも扱っています。

この記事の範囲

この記事は、3つの報道に書かれた事実から、出店の形と投稿のきっかけの関係を読み解いたものです。各社の契約の条件や売上、来場者数、SNSでの実際の反応の量は確認しておらず、施策の成否を評価するものではありません。

おわりに

相手の場に出る施策は、場を借りるだけでは埋もれてしまいます。相手の強みを借りながら、自社にしかない体験を一点に絞って持ち込み、外から見える目印を置くことが、語られる出店の出発点になります。