Case2026.10.23

SNSアクティベーション事例 — 取引データと研究成果を「体験の場」に変えた2つの施策

#イベント#業界動向

データや研究成果は、展示物として見せるだけでは語られにくく、来場者が歩いて・試して確かめられる場に変えたときに体験の材料になります。メルカリとポーラの2つの施策は、その変換の仕方が対照的です。

施策場所・会期素材体験への変換出典
世界の誰かの推し部屋展(メルカリ)東京・原宿、2026年10月28日〜11月1日実際の取引データ米・仏・台湾の架空のファンの「推し部屋」を再現した没入型の展示AdverTimes
B.A THE BLACK GYM(ポーラ)東京・六本木ヒルズ、〜2026年10月24日目もとの研究成果ジムをモチーフにした空間で、塗る・測る・動かす体験FASHIONSNAP

データを「部屋」に変えると、何が起きるのか?

メルカリの施策は、実際の取引データをもとに、アメリカ・フランス・台湾に暮らす架空のファンの推し部屋を再現するものです。報道によると、出品者には実感しにくい、国境を越えた価値のめぐりを、体験として見える形にする試みだとされています。担当者は、日本の誰かが出品したものが、海を越えて世界の誰かの宝物になっている、そのつながりを感じてほしいと語っています。

ここで注目したいのは、数字をグラフで見せるのではなく、「誰かの部屋」という具体的な場面に置き換えている点です。部屋には、持ち主の好みや暮らしが表れます。来場者は、数字ではなく、人の暮らしとして海外のファンを見ることになります。人の暮らしを覗く体験は、感想として言葉にしやすく、「こんなものが海を越えて好まれているのか」という発見が生まれやすいと考えられます。

なお、報道には、SNSでの参加導線や、来場者に投稿を促す仕掛けについての記載はありません。会期が始まる前の段階でもあり、結果は確認できません。ここで読み取れるのは、「語る材料」を展示の中身そのものに置いているという設計までです。

この記事でいう「SNSアクティベーション」とは、体験がSNSで語られるところまでを含めて設計するアクティベーションのことです。考え方はSNSアクティベーションとはにまとめています。ここでは、2つの施策が「語る材料」をどこに置いたのかを読み解きます。

研究成果を「ジム」に変えると、何が起きるのか?

ポーラの施策は、新しいアイクリームの発売を記念した体験イベントです。目もとを立体的に表したゲート型のオブジェをくぐると、ジムをモチーフにした空間があります。来場者はクリームのタッチアップを試せるほか、長年の目もとの研究の展示を見たり、眼輪筋のゾーンチェックを体験したりできます。眼輪筋を動かすオリジナルのエクササイズは動画でも発信され、自宅でも取り入れられるとされています。

ここでの変換は、「目もとのケア」という静かな行為を、「目もとを鍛えるジム」という比喩に置き換えたことです。ジムという場面は、多くの人にとって身近で、体を動かす行為と結びつけて理解しやすいものです。比喩が体験の入口になり、研究の展示やチェックが、その比喩を裏づける役割を持っていると読めます。

また、エクササイズを動画で発信し、自宅でも続けられるようにしている点は、体験を会場の外へ持ち出す工夫です。会場に来た人が、帰宅後もその体験を思い出して語る余地を残しています。こちらも、報道にはSNSでの投稿の仕掛けや来場者の反応は書かれておらず、効果は確認できません。

2つの施策に共通する設計は何か?

共通しているのは、「説明したいこと」をそのまま見せるのではなく、来場者が自分の体で確かめられる別の形に置き換えている点です。

  • メルカリ:取引データ → 人の暮らしとしての「部屋」
  • ポーラ:研究成果 → 身近な場面としての「ジム」

どちらも、中身の強さ(データや研究)を、受け手が理解しやすい場面に変換しています。説明のままでは、来場者はそれを「聞く」だけです。変換すると、来場者は「入る」「試す」「確かめる」ことができます。体験が語られる材料になるのは、この「自分で確かめた」という実感があるからだと、私たちは考えます。

日本で似た企画を考えるとき、何を決めればよいのか?

自社にあるデータや研究成果を体験の場に変えるときは、次の順で決めておくと、設計が進めやすくなります。

  1. 見せたい中身(データ、研究、歴史など)を一つに絞る
  2. その中身を、来場者が身近に感じる場面や比喩に置き換える
  3. 来場者が「入る」「試す」「確かめる」のどれをするのかを決める
  4. 会場の外へ持ち出せるもの(動画、持ち帰れる情報など)を用意する
  5. 来場者が撮りたくなる場面と、撮ってよい範囲を決める
  6. 投稿の量や内容を測る指標を、あらかじめ決めておく

たとえば、食品ブランドが、自社の工場で長年積み重ねた製法の研究を見せたい場合を考えます。研究の資料を並べるのではなく、「味の違いを確かめる実験室」のような場面に置き換えれば、来場者が試しながら理解できます。また、アパレルブランドが、販売データから見えた意外な着こなしの傾向を見せたい場合は、傾向を一覧にするのではなく、その着こなしを再現した「部屋」や「通り」に置き換える方法があります。

この記事の範囲

この記事は、報道されている内容の範囲で2つの施策を読み解いたものです。両施策の来場者数や投稿の反応、成果は報道に記載がなく、効果は扱っていません。また、各ブランドの意図を断定するものではありません。

おわりに

データや研究を体験の場に変える工夫は、説明を「確かめる」に置き換えることから始まります。サービスの考え方は、SNSアクティベーションのページでも紹介しています。