Case2026.10.23

飲食店の撮影・配信席は、SNSアクティベーションとして何を設計しているのか

#イベント#業界動向

飲食店が客の撮影や配信を「黙認」から「歓迎」に変えると、店は「食べる場所」から「発信する場所」に変わります。焼肉ライクが2026年10月19日に新宿南口店で始めた撮影・配信向けの特別席は、その変化を予約・時間枠・設備の三つで設計した例です。

設計の要素公開されている内容(出典:AdverTimes 2026年10月21日の記事)
予約前日までに、店舗のLINE公式アカウントから予約する
時間枠1枠60分、最大2人まで
費用面の条件追加料金なし。指定メニューの注文義務もなし
設備明るい照明の「女優ミラー」、料理や手元を真上から撮れる設備、専用の背景。ライブ配信にも対応
企画の監修俳優・タレントが企画を監修し、限定メニューも用意

撮影・配信席は、SNSアクティベーションとして何を設計しているのか?

SNSアクティベーションとは、体験がSNSで語られるところまでを含めて設計するアクティベーションのことです。この考え方で見ると、撮影・配信席は「撮影のしやすさ」を店に組み込んだ設計だと分かります。

公開されている情報(AdverTimes)によると、この店舗は、撮影や情報発信まで楽しめる新しい店舗体験を提案する場として特別席を設けています。席の設備は、監修した俳優・タレントに普段の撮影方法を聞いたうえで、店で撮られたSNS投稿や飲食店を紹介するアカウントの投稿を参考に、撮影の角度や構図を研究して決めたとされています。

つまり、投稿が生まれる「場面」を観察し、その場面を店の中にあらかじめ用意したのです。来店客に「撮ってください」と頼むのではなく、撮りやすい環境を先に整えることで、投稿のきっかけを作っています。SNSアクティベーションの全体像は、SNSアクティベーションとはで整理しています。

なぜ「予約制・時間枠」にしたことが重要なのか?

撮影や配信に使う席は、通常の席より長く使われやすく、撮影の準備にも時間がかかります。誰でもいつでも使える形にすると、他のお客様の食事の邪魔になったり、席を待つ人が出たりします。

予約制で時間枠を決めると、この問題を避けられます。利用する人は、決まった時間を自分のペースで使えます。店は、混雑を予測して運営できます。撮影の場を「特別な席」として扱うことで、通常の来店客との両立ができます。

たとえば、ポップアップやイベント会場で撮影の場を設ける場合も、同じ考え方が使えます。誰でも自由に撮れる広場と、予約して使うフォトスポットを分けると、混雑と待ち時間を管理しやすくなります。イベントでの動線の考え方は、イベントで撮影用の動線を分けるべきなのは、どんなときかで整理しています。

追加料金なし・注文義務なしは、何を意味するのか?

利用に追加料金がかからず、指定メニューの注文も必要ないという条件は、撮影・配信を「購入の条件」にしない設計です。通常の飲食代だけで、撮影設備を使えます。

この設計は、利用する人の心理的な負担を下げます。「撮影するなら、これを頼まないといけない」という条件がないため、気軽に試せます。気軽に使えるほど、利用する人が増え、投稿の機会も増えます。

一方で、店にとっては、設備の導入や運営の手間が先に発生します。それでも設ける理由は、撮影や配信そのものが、店を知ってもらうきっかけになるからです。記事では、これまで来店していなかった層に向けた狙いもあるとされています。

監修者と限定メニューは、どんな役割を持つのか?

特別席には、俳優・タレントが企画を監修した限定メニューも用意されています。ここでは、監修者が「席の使い方の見本」にもなっていると読めます。普段どう撮っているかを聞いて設備に反映し、その人の名前を冠した席とメニューにすることで、席の世界観が一つにまとまります。

ただし、この読み解きは公開されている範囲にとどまります。席の利用者数や投稿の数、投稿された内容については、元の記事には記載がなく、効果は確認できません。私たちも、成果の数字は述べません。

飲食店の施策を考えるとき、何を決めればよいのか?

飲食店や商業施設で、撮影・配信を歓迎する場を設けるときは、次の順で決めておくと、設計が進めやすくなります。

  1. 誰に使ってほしいのか(普段来店しない層か、すでに来店している層か)
  2. 撮影・配信が生まれる場面を観察する(どの角度、どの構図で撮られているか)
  3. 予約や時間枠など、他のお客様との両立の仕組みを決める
  4. 費用面の条件を、利用のしやすさと店の負担の両面で決める
  5. 設備と、席の世界観をそろえる(照明、背景、メニュー)
  6. 効果を測る指標を、あらかじめ決めておく

たとえば、カフェが新作ドリンクの発売に合わせて、撮影しやすい席を数席だけ用意する場合を考えます。席数と時間枠を絞って予約制にすれば、通常の営業を妨げずに試せます。小さく始めて、利用状況を見ながら広げる進め方もあります。

この記事の範囲

この記事は、報道されている店舗の取り組みを、公開されている範囲で読み解いたものです。店舗の運営の詳細や成果については扱っていません。元の記事に書かれていることだけを根拠にしており、店舗の意図を断定するものではありません。

おわりに

撮影・配信席は、客の行動を観察し、その行動をしやすい環境を店に組み込んだ設計です。SNSアクティベーションの視点では、「語られる場面」を先に用意することが、店の体験を広げる一つの手がかりになります。サービスの考え方は、SNSアクティベーションのページにもまとめています。