Data2026.08.07

同じフォロワー帯でも、エンゲージメント率はどれだけ違うのか──487件の実績記録から

#エンゲージメント#フォロワー#Instagram

結論から書きます。フォロワー数がほぼ同じ範囲に収まるアカウント同士を比べても、投稿へのエンゲージメント率(ER)にはこれだけの差があります。私たちが保有する実績記録の中から、分母をフォロワー数に揃えて比較できた487件を集計した結果です。

なお、本稿で扱う数値はすべて匿名化された集団統計であり、特定のアカウント・ブランド・案件を示すものではありません。ERの記載を確認できた870件のうち94.5%はInstagramの投稿であるため、以下はInstagramに関する記録としてお読みください。

なぜこの数字を検証したのか

候補となるアカウントを絞り込む際、フォロワー数の「帯域」を目安に使う場面は少なくありません。◯万人台だからこの水準の反応が見込める、という感覚的な相場観です。ただ、私たちが日々の実績記録を振り返る中で気になっていたのは、その感覚がどこまで実態に裏付けられているのか、という点でした。フォロワー数の水準を揃えれば、ERもある程度そろうものなのでしょうか。今回、この問いを実績記録で確かめました。

どこまでを、同じ物差しで比べたか

実績記録の中からERの記載を洗い出したところ、870件が対象になりました。ただしこの870件を一件ずつ確認すると、記載されているER値の「分母」が一定でないことがわかりました。投稿単位のリーチやインプレッションを分母にした値と、フォロワー数を分母にした値が混在しており、内訳はリーチ・インプレッション基準が44%、フォロワー基準が56%でした。リーチを分母にした値は母数が小さくなる分、数値が高く出やすくなります。この2種類を混ぜたまま比べると、見えている差が「フォロワー数による違い」なのか「記録方法の違い」なのか、区別がつかなくなります。

そこで本稿では、フォロワー数を分母にしていると判定できた487件のみを対象にしました。以下の数値は、すべてフォロワー数に対するエンゲージメント率です。

図版:「同じ物差し」に揃えるまで——870件のうちフォロワー基準487件を対象化
図版:「同じ物差し」に揃えるまで——870件のうちフォロワー基準487件を対象化

結果:帯域の中の方が、帯域の外より差が大きい

フォロワー数を4つの帯域(〜3万/3〜10万/10〜30万/30万〜)に分け、それぞれの四分位範囲(IQR、全体の中央50%が収まる幅)を集計しました。

帯域nQ1Q3帯域内のIQR幅
〜3万482.29%5.09%2.80pt
3〜10万1351.47%4.39%2.92pt
10〜30万1920.95%3.47%2.52pt
30万〜1121.14%4.94%3.80pt

帯域ごとの中央値を比べると、最も高い帯域と最も低い帯域の差は1.44ポイントにとどまります(2.00%〜3.44%の範囲)。一方、それぞれの帯域「の中」を見ると、同じ帯域に属するアカウント同士の開き(IQR幅)は2.52〜3.80ポイントに達します。帯域と帯域の差より、同じ帯域の中の個体差の方が大きいのです。

図版:帯域別のER分布レンジ(Q1〜Q3)と中央値
図版:帯域別のER分布レンジ(Q1〜Q3)と中央値

言い換えると、「フォロワー数が10万人前後」という条件だけを揃えても、そこに含まれるアカウントのERは、高い方から低い方まで大きく分布しています。フォロワー数の水準だけを見て、その投稿がどれだけ反応を得るかを見積もることはできません。

一歩先へ:帯域というくくりに、どれだけの情報量があるか

「フォロワー数だけでは決められない」ということ自体は、すでに知られた話かもしれません。ここで立ち止まりたいのは、その先です。

帯域内のばらつきが帯域間の差を上回るということは、「フォロワー帯」というくくりで候補を語ること自体が、思っているほど多くの情報を運んでいない可能性を示しています。「3〜10万人台のアカウント」という括りは、その中にいるアカウント同士を同じグループとして扱ってよいほど、性質の近い集団ではないということです。

候補リストの絞り込みでフォロワー帯を使うこと自体を否定するものではありません。ロングリストを作る一次的なフィルタとしては機能します。ただ、その先の優先順位付けや最終選定の根拠として帯域を使うのであれば、それは同じ帯域の中に広がる個体差を無視した判断になります。帯域の先にある個別の実績を見て初めて、絞り込みが意味を持ちます。

帯域の使いどころを分ける

今回の結果を踏まえると、フォロワー帯という情報は、使う場面によって役割を分けて考える必要があります。

  • ロングリストの作成: 案件の規模感に応じて対象範囲をざっくり絞る一次フィルタとしては、引き続き有効です。
  • 候補の優先順位付け: 帯域の水準だけを根拠にせず、同じ帯域内でどれだけ反応を得てきたか、個別の実績を確認する工程を挟む必要があります。
  • 提案時の期待値のすり合わせ: 「この帯域ならこの程度の反応」という一律の相場観を前提に置くと、同じ帯域内の実績差を踏まえたときに、実態とずれる可能性があります。

帯域は候補を集める入り口としては機能しても、その中の一人をなぜ選ぶかを説明する根拠には、単独ではなり得ません。

このデータの範囲

今回の集計にはいくつかの前提があります。対象は自社が保有する実績記録であり、業界全体を代表するサンプルではありません。今回の集計対象には、ERの記載がなかった記録(あるいは記載はあっても数値として読み取れなかった記録)は含まれていません。また、ERの記載があった870件のうち、リーチやインプレッションを分母にしていると判定した記録も、物差しを揃えるため対象から外しています。記載がない記録は、単に運用上記録が残らなかったというだけであり、ERが低かったことを意味するものではありません。加えて、今回のフォロワー数は記録時点の値であり、投稿当時のフォロワー数とは一致しない可能性があります。アカウントは時間とともに成長するため、この点は数値の精度に影響し得る留保として明記しておきます。

おわりに

フォロワー数の水準は、候補を絞り込むための一つの目安にはなります。ただ、それだけでは投稿がどれだけの反応を集めるかを言い当てることはできません。同じ帯域の中にどれだけの幅があるかを踏まえた上で、個別の実績に目を向けることが、次の一歩になると考えています。

次回も、私たちの実績記録をもとにした知見をお届けする予定です。

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出典: スタッツ株式会社調べ(自社案件の実績記録)。エンゲージメント率の記載があるレコードのうち、フォロワー数を分母にしていると判定できたもののみを集計。個別の案件・ブランド・時期が特定されない形に統計処理された記録です。