イベント受付のQRコード化 — 紙のゲストリスト運用と何が変わるか

イベント受付のQRコード化とは、招待した方一人ひとりに固有のQRコードを発行し、当日はそれを読み取って来場を記録する方式です。紙やスプレッドシートの名簿からお名前を探して消し込む作業を、読み取りの一手に置き換えます。
結論から書きます。QRコード化で本当に変わるのは、受付の速さそのものよりも、同じ名簿を複数の場所で、同時に、最新の状態で見られるようになることです。速さは、その結果としてついてきます。この記事では、紙の運用と比べて何がどう変わるのか、移行に何を用意するのか、そしてQRにしても紙が必要になる場面を、実務の目線で整理します。
なお、本稿は自社のイベント運営の実務からの一般化であり、特定のブランド・案件・個人を示すものではありません。
紙のゲストリスト運用は、何が大変なのか
紙やスプレッドシートの名簿で受付をすると、次の4つが同時に起こります。
第一に、照合が「探す」作業になります。 お名前を目で追って見つける以上、名簿が長いほど時間がかかります。読みの難しいお名前、同じ姓の方が複数いる場合、招待状と当日で表記が違う場合には、さらに時間がかかります。
第二に、印刷した瞬間に古くなります。 直前の辞退、代理でのご出席への変更、追加の招待は、印刷後の名簿には反映されません。差し替えを繰り返すうちに、現場に複数の版が存在することになります。
第三に、レーンを増やしにくくなります。 受付を2か所にするには、名簿を分けるか、同じものを2部持つことになります。分ければ「自分の手元に載っていない方」が出ますし、2部持てば、どちらに印がついたのか分からなくなります。
第四に、来場記録が後工程に残ります。 当日つけた印を、終わってから清書し直す作業が発生します。この清書は、記憶が薄れてからの作業になりがちです。
QRコード化すると、何が変わるのか
| 紙・スプレッドシートの名簿 | QRコード受付 | |
|---|---|---|
| 照合 | お名前を目で探す | 読み取りで確定する |
| 同時受付 | 名簿を分けるか、1か所に集約する | 同じ名簿を複数の端末で同時に見られる |
| 直前の変更 | 印刷後は差し替えが必要 | 当日まで反映を続けられる |
| 来場記録 | 当日の印を、後でまとめ直す | その場で記録が残る |
| 同じ招待での二度目の受付 | 目視でしか気づけない | 自動で弾かれる |
| 会場に必要なもの | 特になし | 端末と通信環境 |
最後の行は、正直に書いておきます。QRコード化には端末と通信が必要です。これが、後で述べる「それでも紙が必要になる場面」の理由になります。
QRコードは、どうやってゲストに届けるのか
手順としては、次の流れになります。
- 招待者の名簿を用意する。 お名前と連絡先(メールアドレス等)が必要です
- 招待状を配信する。 当日お持ちいただくものを、この時点で明記します
- 出欠の回答を受ける。 ここで回答が集まらないと、次に進めません
- ご出席の回答に対してQRコードを発行する。 回答された本人に直接届く形にします
- 当日、受付で読み取って記録する。 終了後は、出欠と来場時刻がそのままデータとして残ります
4の「本人に直接届く」が要点です。主催者が一括で受け取って転送する形にすると、誰にどれを送ったのかという別の管理が発生し、間違いも起きやすくなります。
QRコード化しても、紙が必要になる場面
移行を決めるときに、いちばん先に確認しておきたいのがここです。
- 通信環境が弱い会場。 地下や電波の入りにくい会場では、事前に現地で必ず確認します
- 端末の電源。 受付は開場前から立ち上がります。予備の電源を持ちます
- QRコードをお出しになれない場合。 メールが届いていない、当日お手元に端末がない、ということは起こります。お名前での受付経路を必ず残しておきます。 QRがなければ入れない受付にはしません
- 当日枠・代理でのご出席。 その場で登録できる手段を用意しておきます
3つ目は、運用の話であると同時に、姿勢の話でもあると考えています。お越しいただいている以上、こちらの都合で用意した仕組みに合わないという理由でお待たせすることは、あってはならないからです。
私たちが自社で作った理由
ここまで書いたことは、すべて自分たちの困りごとでした。私たちはイベント制作の現場を持っていて、受付の行列も、直前の変更も、終わってからの清書も、毎回自分たちで引き受けてきたためです。その必要から開発したのが、招待制イベント専用のQR受付システム S/PASS です。
- ゲストはアプリのインストールも会員登録も不要
- 受付は2秒で完了する
- 複数の端末で同時に受付ができる
- 同じQRコードの二度目の読み取りは自動で弾かれるため、来場記録が実態とずれない
ただし、仕組みを入れ替えても、到着の山そのものは低くなりません。何人体制で受け付けるのか、動線をどう引くのかという設計は別に必要です。そちらは招待制イベントの受付設計ガイドにまとめています。
おわりに
QRコード化は、受付を機械的にするための移行ではありません。「探す」と「後で清書する」という、人がやらなくてよい部分を減らすための移行です。
空いた時間をどこに使うのかは、そのイベントの設計次第です。私たちは、そこをご挨拶とご案内に使いたいと考えています。
よくある質問
Q. イベント受付をQRコード化するには、何が必要ですか?
A. 招待者のお名前と連絡先、QRコードを発行して配信する仕組み、当日に読み取る端末と通信環境の3つです。専用の機材は必要なく、スマートフォンやタブレットのカメラで読み取れます。
Q. ゲストにアプリのインストールをお願いする必要はありますか?
A. 方式によります。招待制イベントでは、アプリのインストールや会員登録を求めない形をおすすめします。当日はじめてお越しになる方に、入口で作業をお願いすることになるためです。
Q. QRコードを忘れた方は、入れないのですか?
A. そのような受付にはしないでください。お名前での受付経路を必ず残し、その場で来場を記録できるようにしておきます。
Q. スプレッドシートでの管理と、何が違いますか?
A. スプレッドシートも複数人で同時に見られますが、受付の場では「探す」作業が残ります。また、誰がどの行に印をつけたのかの取り違えが起こります。QRコードは、この照合と記録を一手にまとめる仕組みです。
Q. 会場の通信環境が不安な場合は、どうしますか?
A. 事前に現地で電波を確認します。そのうえで、名簿を印刷したものと、お名前での受付手順を予備として必ず用意しておきます。
注記: 本稿は自社のイベント運営の実務からの一般化です。S/PASSの機能に関する記述は仕様に基づきます。個別の案件・ブランド・個人が特定されない形で記述しています。